注文住宅を契約する際に支払う「手付金」が、状況によって戻ってくるのかどうかは、多くの人が気になるポイントです。
手付金の返還の可否は、契約の種類や解約の理由によって異なります。
本記事では、手付金の基本的な役割、返金されるケースとされないケース、注意点について詳しく解説します。
手付金とは?
手付金とは、注文住宅の契約時に買主(施主)が売主(工務店・ハウスメーカー)に支払うお金で、契約成立を確定させるための「担保」としての役割を持ちます。
手付金の主な役割
- 契約成立の証明:契約が正式に締結されたことを示す。
- 契約解除の条件:一定の条件のもと、買主または売主が契約を解除できる(手付解除)。
- 違約金の前払いの性質:契約解除時に違約金の一部として扱われることがある。
手付金の金額
手付金の金額は、一般的に「売買契約金額の5~10%」程度が目安とされています。
ただし、宅地建物取引業法(宅建業法)により、業者が受け取れる手付金の上限は売買価格の20%までと規定されています。
手付金が返ってくるケース
手付金は、特定の条件を満たす場合に返還されることがあります。
住宅ローン特約による解除
注文住宅を購入する際、多くの契約には「住宅ローン特約」が付いています。
これは、住宅ローンの審査に通らなかった場合に契約を解除できるという特約です。
この特約に基づいて契約解除が行われた場合、手付金は全額返還されます。
- 住宅ローン特約が適用される例
- 住宅ローンの審査に落ちた
- 希望する融資条件でローンを組めなかった
この場合、通常は手付金だけでなく、支払ったその他の金額(中間金など)も返還されることが多いです。
売主(ハウスメーカー・工務店)の都合で契約が解除された場合
- ハウスメーカーや工務店の倒産
- 必要な許認可が取得できなかった
- 施工不能な事情が発生した(法令上の問題など)
上記のような売主側の事情で契約が解除された場合、手付金は全額返還されるのが一般的です。
契約前のクーリングオフ適用
注文住宅の契約をする際、契約場所が「事業者の事務所以外(例:自宅・ホテルの会議室など)」で行われた場合、宅建業法のクーリングオフ制度が適用されることがあります。
クーリングオフが適用されると、契約締結後8日以内であれば無条件で解約可能で、手付金も全額返還されます。
手付金が戻らない(または一部のみ返還される)ケース
一方で、手付金が返還されない、または一部しか戻らないケースもあります。
買主の都合での手付解除
契約後に買主の都合(自己都合)で契約を解除する場合、手付金は返還されず、売主(ハウスメーカー・工務店)のものになります。
これを「手付解除」と言います。
- 手付解除のルール
- 買主が契約を解除 → 手付金を放棄
- 売主が契約を解除 → 売主は手付金の2倍の金額を買主に支払う
これは、民法557条に基づく「手付解除」の制度です。
契約後に本契約に進み、工事が始まった後
契約後に建築が進み、施主の都合で途中解約する場合、手付金の返還は難しくなります。
すでに施工が始まっている場合、実費(設計料・材料費・人件費など)を引いた額しか戻ってこないか、全額没収となるケースもあります。
違約解除(契約違反)
- 契約に定められた支払いを期日までに行わなかった
- 施主が契約違反行為をした
- 設計変更を過度に繰り返し、工務店が対応できなくなった
このような場合、契約違反による解除となり、手付金は違約金として没収される可能性があります。
手付金を守るための注意点
注文住宅の契約をする際、手付金を守るために以下の点を確認しておきましょう。
契約前に「住宅ローン特約」の有無を確認する
住宅ローン特約がない場合、ローン審査に落ちても契約解除が難しくなり、手付金が戻らない可能性があります。
契約前に必ず確認しましょう。
手付解除の期限をチェック
手付解除が可能な期限は契約書に明記されています。
期限を過ぎると手付解除ができず、違約解除となる場合があるため、契約書をよく確認しましょう。
クーリングオフ制度の適用を確認
クーリングオフ制度が適用されるかどうかは契約の場所によります。
適用される場合は、万が一の時に備えて、契約後8日以内に慎重に判断しましょう。
契約解除時の違約金規定をチェック
契約書には契約解除に伴う違約金が明記されています。
工事開始後に解除する場合は、違約金が発生するため、契約書の内容をしっかり確認しておくことが大切です。
まとめ
注文住宅の手付金は、契約の種類や解約の理由によって「返ってくる場合」と「返ってこない場合」があります。
手付金が返ってくるケース
- 住宅ローン特約による解除
- 売主(ハウスメーカー・工務店)の都合で契約が解除
- クーリングオフ期間内での契約解除
手付金が返らないケース
- 施主の都合による解約(手付解除)
- 建築工事が始まった後の解約
- 施主が契約違反をした場合
契約を結ぶ際には、契約書の内容をしっかり確認し、手付金を無駄にしないための対策をとりましょう。
もし契約に関する不安がある場合は、事前に弁護士や住宅関連の専門家に相談するのも有効な手段です。
以上、注文住宅の手付金は戻ってくるのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。